鴨神社。
東みよし町役場の南1km弱の場所に鎮座。
式内社 鴨神社に比定される神社。
境内
境内北側の鳥居
扁額
なお2019年時点ではコンクリート製の白い鳥居に変わっていました
扁額
社号標
鳥居脇の手水舎
石段
階段脇の木
狛犬
注連柱
境内南側の鳥居と扁額
境内南側の手水舎
社務所
社殿
社殿と鳥居
この社殿前の鳥居は、2019年時点ではコンクリート製のものに建て替えられていました
…が、台風による倒木がぶつかったそうで一部破損してしまっていました。その後撤去されたようです。
残された扁額
拝殿
拝殿の扁額
本殿
境内社等
境内社
右から国瑞彦社、天神地祇社、豊受大神宮社。『式内社調査報告』には明治末の神社合併に際し天神地祇社に19社、国瑞彦神社に35社が合祀されたとあります。
境内社
祀られている?葵
当社の春祭は葵祭と呼ばれ、秋祭が小祭とされるのに対し大祭と称されるそうです。
境内には注連縄の巻かれた木が複数ありました
全て御神木なのでしょうか。本殿正面に夫婦樫という大木があるそうなのですが、上の写真がそれか、どうか。
由緒
当社は延喜式内社にて鎮座の年代は不詳なれど貞観庚辰二年以前の創建にして京都上賀茂神社の勧請所である
爾来壹千百四拾年余福田庄(旧加茂村)の平和と五穀豊穣を守護し氏子の尊崇を聚め今日に至る
旧阿波藩主蜂須賀家は特に厚く崇敬せられ天正年間より維新初年まで毎年雷除・武運長久の祈願を奉呈した
創建時期は不詳。
貞観2年(860)以前に京都賀茂別雷神社を勧請したと伝えられますが、由緒等を伝える古文書・古記録はないそうです。
ただし、『徳島県神社誌』に「鴨神社の鎮座は白河氏らとともに六世紀ごろとみてよかろう」(白河氏は恐らく現宮司家の白川氏)とあり、これに基づけば勧請元とされる賀茂別雷神社の創建(678年とされる)より古い創建となり矛盾が生じます。
ここから、当社の方が賀茂別雷神社の元宮であるとする見方もあるようです。あわせて三好市三野町加茂野宮の下加茂神社(位置)が賀茂御祖神社の元宮であるとも。
とはいえ、賀茂御祖神社の創建は伝承では崇神天皇7年(BC91)とされ、賀茂別雷神社も祭神の降臨は神武天皇の御代だとする伝承があります。
延喜式神名帳にみえる「阿波国美馬郡 鴨神社」に比定されています。
『阿波志』曰く「鴨祠 延喜式小祀と為す加茂村に在り旧事紀に所謂、事代主の神孫鴨王是也、延喜式大和高市、鴨事代主神あり白川氏、宮川河原氏世々祝と為る」。
鴨王=天日方奇日方命は、事代主神あるいは大物主神と玉櫛媛命の子、媛蹈鞴五十鈴姫命の兄で、大神氏・賀茂氏の祖とされます(神孫とあるのは孫とする説もあるかららしい)。
『百錬抄』寛治4年(1090)7月13日の記事に、その年の7月に賀茂上下社に対して御供田600余町が寄進されたことが見え、その御供田のなかに当社が鎮座する三津郷の地42町余が含まれていることからその頃には賀茂別雷神社との関係が史料的に裏付けられます。
当社より加茂谷川上流に貴船神社、加茂内に奈良神社、澤田神社、氏神社、若宮神社、新宮神社、大田神社、片岡神社が摂社として配されており、これは賀茂別雷神社に因むものだとのこと。
明治8年郷社列格。
明治44年に、式内社論社である山根の田寸神社と中村の横田神社を合祀。
いずれも後に元社地に小祠が建立されています。
祭神は別雷命。上賀茂神社からの勧請とすれば、至極当然の説。
『神名帳考証』は鴨事代主命を挙げ、大和国高市御縣坐鴨事代主神社(式内社、現在の河俣神社に比定)と記しています。
また同書は、「旧事紀云、事代主神孫鴨王」とも述べ、『神名帳考証土代』にも同内容がみえます。
前述の通り『阿波志』も同じことを言っていて、鴨王=天日方奇日方命(事代主神の子あるいは孫、もしくは大物主神の子)を祭神とする説と思われます。
明治43、44年に市杵島姫命、猿田彦命、品陀和気命、天照皇大神を本殿に合祀したと『式内社調査報告』にあるのですが、猿田彦命だけ境内由緒書にみえません。
明治44年には前述の通り山根の田寸神社(猿田彦命)と中村の横田神社(市杵島姫命)を合祀しており、2社は後に旧地に戻されたので、猿田彦命は当社の祭神からは外れたということなのかも。そうすると市杵島姫命が残っているのは謎ですが、他にも厳島社や弁天社を合祀していたからとかではないでしょうか…
御朱印
御朱印はあります。
宮司さん非常駐のため要連絡。
ググると出てくる電話番号は社務所のもののようです(転送設定はなさそう)。
社務所に宮司さん御自宅の電話番号が掲示されていますが、下4桁だけなので特に県外から来た人は戸惑うと思います。
アクセス
阿波加茂駅と三加茂駅の中間ほど、国道192号沿いに東みよし町役場があります。そのそばの東みよし町加茂交差点(位置)から南へしばらく直進します。
1kmほど行ったところ(位置)で右手に入り坂を上ります。200mほど進むと右手に鳥居が見えてきますので、そちらに入ります。
鳥居の左手、社務所脇に駐車可能です。
神社概要
社名 | 鴨神社(かもじんじゃ) | |
---|---|---|
通称 | – | |
旧称 | 賀茂大明神 加茂皇太神 | |
住所 | 徳島県三好郡東みよし町加茂3650-1 | |
祭神 | 別雷命 | 現祭神 |
鴨事代主命 | 『神名帳考証』 | |
鴨王(天日方奇日方命) | 『神名帳考証』 『神名帳考証土代』 『阿波志』 | |
合祀 | 市杵島姫命 品陀和気命 天照皇大神 | |
社格等 | 式内社 阿波国美馬郡 鴨神社 旧郷社 | |
札所等 | – | |
御朱印 | あり(神職非常駐のため要連絡) | |
御朱印帳 | – | |
駐車場 | 境内駐車可(南側鳥居の方から) | |
公式Webサイト | – | |
備考 | – |
参考文献
- 「鴨神社」, 『日本歴史地名大系』(データベース「JapanKnowledge」)
- 「鴨神社」, 神社本庁教学研究所研究室編『平成「祭」データ(CD-ROM)』全国神社祭祀祭礼総合調査本庁委員会, 1995
- 式内社研究会編『式内社調査報告 第二十三巻 南海道』皇學館大学出版部, 1987
- 徳島県神社庁教化委員会編『改訂 徳島県神社誌』徳島県神社庁, 2019
- 伴信友『神名帳考証』(『伴信友全集 第一』国書刊行会, 1907-1909(国会図書館デジタルコレクション 283コマ)
- 明治神社誌料編纂所編『府県郷社明治神社誌料 下巻』明治神社誌料編纂所, 1912(国会図書館デジタルコレクション 264コマ)
- 度会延経『神名帳考証』(佐伯有義編『神祇全書 第一輯』思文閣, 復刻版, 1971.所収)