穴門山神社。
倉敷市真備町妹、高山の山頂付近に鎮座。
式内社 穴門山神社ならびに元伊勢 名方浜宮の論社。
境内
麓の鳥居
狛犬
注連柱
参道正面の石段
途中で途切れています。現在は境内南西から登るようになっていますが、かつては正面からの道があったのかと思われます。
狛犬
手水鉢
境内からの景色
社殿
石段と社殿
拝殿
扁額
社務所?
本殿
磐座?
社殿右手の巨岩
延享元年(1744)の願書に「神社ハ大岩ノ下ニ鎮座御座候」とあり、またその付近から古代の遺物が発見されているそうで、『式内社調査報告』は「古代祭祀遺跡であり、大岩は磐座であろう」としています。
配置からしてもこの岩がそれらしく思えるのですが、境内から少し上ったところにさらに大きな岩があるそうです。その岩の下には祠もあり、仮に祭祀対象が岩であったのならそちらの方がよりそれらしい気もします。
実際に巨岩まで行かれた方の記事に写真が載っていました。山中には不思議な切れ目のある岩もあるらしく、興味を惹かれます。
ただこちらの記事や他の山行記録から、道が荒れている(藪漕ぎもある?)ことがわかります。実際に行かれる際には要注意です。
境内には他にも大きな岩が複数ありました
境内社等
境内社が4社
『岡山県神社誌』には境内社として荒神社、水神社、三島神社、八千戈神社が挙げられているのでこの4社がそれぞれいずれかでしょうか。
遥拝所のようなところ
由緒
創建時期は不詳。
『倭姫命世記』にみえる「名方浜宮」を当社とする説があります。
天照大神が名方浜宮に祀られた時期は崇神天皇54年(BC44)から4年間とされるので、当社が名方浜宮であればその時期には存在したことになります。
また、延喜式神名帳にみえる「備中国下道郡 穴門山神社」に当社をあてる説があります。
ただ『吉備之志多道』は川上郡高山村(現・高梁市川上町高山市)の穴門山神社が式内社であり、当社はそちらからの勧請だと論じています。
明治政府も、後述の通り一度は当社を(高山市の神社とともに)式内社認定したものの、すぐに取り消しています。
延享元年(1744)の願書に以下の由緒がみえます。
往古は妹村長田という地(場所不明)に鎮座していたと伝わります。
永正年間(1504~21)に出雲の懸合の城主が大挙して来襲した際、城(池ノ上諏訪木というところにあったというが不明。諏訪山城というのが付近にあったようなのでそれか)が落とせないのは当社の加護によるものだとして社殿に火を放ち、神器、神宝、古文書等悉く焼き払ったといいます。
出雲勢の守護神・青穂明神が重視されたので当社は衰微したとも。
その後再興された時、神鏡その他の品が境内から出土。
正徳3年(1713)の『妹村畠方検地帳』に「あなた奥」という地名がみえ、これは当社近くを指すらしく、「アナタ神社」あるいは「アナト神社」が存在した可能性がある、と『式内社調査報告』は述べています。
明治5年郷社列格。
明治8年7月30日に政府は当社と川上郡高山市村(現・高梁市川上町高山市)の穴門山神社を共に式内社と定めますが、同年8月25日に高山市村の方のみを式内社とし、当社は外されてしまいます。
その後再度の式内社認定を求める運動もあったようです(結果は資料にみえませんが、おそらく再認定はなかったものと思われる)。
現祭神は穴門武姫命。吉備武彦命の娘で日本武尊の妃とされます。
『平成祭データ』は配祀神を天照大神、倉稲魂神、仲哀天皇、少名彦命としますが、『穴門山神社文徴録』は相殿神を天照大神、倉稲魂神、仲哀天皇、大己貴命、保食神、少名彦命としています。
また昭和27年の神社明細書は、祭神を穴門武姫命、大己貴命、下照姫命、活津彦根命、市杵嶋姫命、神皇産霊神、相殿神を天照大神、倉稲魂命、仲哀天皇、少彦名命、天穂日命、三熊野大神、天稚彦命、田心姫命、素戔嗚命、経津主命、湍津姫命、武甕槌命、大山祇命、保食神としています。
御朱印
御朱印の有無は不明。
アクセス
備中呉妹駅の北西700mくらいのところ(位置)に鳥居が建っています。
そこから北へ道なりに。道は狭いですが、舗装はしっかりしています(ただ場所が場所なので災害後は通行止めになることもあるようです)。
しばらく山を上っていくと、右斜め後ろ方向に分岐する道があります(位置)。
そこを上ると神社。駐車場(というか開けた場所)あり。
一応総社(北側)や矢掛(西側)からも県道282号で上ってこられますが、神社手前で県道から外れた辺りに未舗装区間があるらしいです(ストビューないため確認不可。矢掛方面は県道すら通行止めでストビューなし…)。総社方面からの道の途中には有名な怪奇スポットがあります。
神社概要
社名 | 穴門山神社(あなとやまじんじゃ) |
---|---|
通称 | 高山宮 赤濱宮 |
旧称 | – |
住所 | 岡山県倉敷市真備町妹895 |
祭神 | 穴門武姫命 |
配祀 | 天照大神 倉稲魂神 仲哀天皇 少名彦命 |
合祀 | 大己貴命 下照姫命 天穂日命 活津彦根命 市杵島姫命 神皇産霊神 三熊野大神 天稚彦命 田心姫命 |
社格等 | 式内社 備中国下道郡 穴門山神社 元伊勢 名方浜宮 伝承地 旧郷社 |
札所等 | – |
御朱印 | 不明 |
御朱印帳 | – |
駐車場 | あり |
公式Webサイト | – |
備考 | 社殿横、あるいは高山山中の岩が磐座? |
参考文献
- 「妹村」, 『日本歴史地名大系』(データベース「JapanKnowledge」)
- 「穴門山神社」, 神社本庁教学研究所研究室編『平成「祭」データ(CD-ROM)』全国神社祭祀祭礼総合調査本庁委員会, 1995
- 岡山県神社庁編『岡山県神社誌』岡山県神社庁, 1981
- 式内社研究会編『式内社調査報告 第二十二巻 山陽道』皇學館大学出版部, 1980
- 谷川健一編『日本の神々 神社と聖地 第二巻 山陽・四国』白水社, 1984
- 明治神社誌料編纂所編『府県郷社明治神社誌料 下巻』明治神社誌料編纂所, 1912(国会図書館デジタルコレクション 52-53コマ)