小野神社(厚木市小野)

小野神社。

愛甲石田駅の北西約2.8km、小野に鎮座。

式内社 小野神社に比定される神社。

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境内

鳥居

 

社号標

 

手水舎

社殿

拝殿

 

扁額「閑香大明神」(かんかだいみょうじん)

 

本殿覆屋

ちょっと珍しい形です。なおこの本殿は地面から1mほど高くなった土台の上に建てられており、この土台は古墳の跡ではないかとも言われています。

境内社等

境内社

左から春日神社・八坂神社、日枝神社・阿羅波婆枳神社・淡島神社、稲荷神社・古登比羅神社。

 

境内社

 

道祖神

 

まとめられた旧社号標や灯籠

 

灯籠

 

石碑

灯籠の再建にあたり旧灯籠の一部をここに移設して先人達の御努力に深く感謝と敬意を表して、後世に伝える為、この碑を建之いたします

 

旧社号標

 

石碑

社標の再建にあたり旧社標の一部をここに移設して先人達のご努力に感謝してこの碑を建立いたします

社標文字

表面記 当国十三社式内

    小野神社

裏面記 嘉永第二年歳集巳酉夏四月吉祥良

    総産子中 別当光玉山大鏡院 発起吉澤直右衛門

古き世の人に敬意を表して後世の為に伝えます

由緒

由緒碑

小野神社

この神社は、延長五年(九二七)の「延喜式」巻九に「相模国式内社の内愛甲郡一座小野神社」と書かれています。

現在の拝殿は、嘉永元年(一八四八)に建てられ、わら葺屋根でありましたが、昭和四十三年に鉄板葺に替えられました。本殿は拝殿よりも一メートルほど高い地面に神明造りで造られています。「新編相模国風土記稿」に「閑香明神社、村の鎮守なり。延喜式に載りし小野神社、当国十三社の一にて祭神下春命という」とあります。

明治時代になってから、この神社の祭神には日本武尊も加えられました。それは日本武尊が東国の賊の征伐に向かった際、野火の焼きうちの苦難にあうという「古事記」の記述の地が「小野」と関係するとして祭神に加えたもののようです。

この神社は、建久五年(一一九四)愛甲三郎によって再興されたとも言われています。愛甲氏の本家の横山氏は、小野妹子の子孫と伝えられ、愛甲氏の家系の信仰は厚く、特に江戸時代には、愛甲姓の武将の参詣が記録されています。

創建時期は不詳。

社伝によると、霊亀2年(716)に行基が薬師如来像を当社に奉安したとされます。

 

延喜式神名帳にみえる「相模国愛甲郡 小野神社」は当社に比定されています。

 

建久5年(1194)、大江広元、愛甲三郎秀隆等により社殿再興。

その後数度の社殿再建があり、嘉永元年(1848)に再建された拝殿が現在の拝殿(本殿は明治9年再建)。

 

天正19年(1591)、徳川家康が社領二石五斗を安堵。この時の朱印状には当社のことが「閑香宮」と書かれています。

 

明治6年(1873)、郷社に列格。

 

当社は明治以前は「閑香大明神」と称していました。

これは「かんか」と読みますが、本来は「あいこう」ではないかと『式内社調査報告』で考察されています。愛甲郡の愛甲を洒落て閑香と書いたのではないか、と。

 

また、当社は嘗て南西400mほどにある「神の山」に鎮座していたといわれます。

「神の山」と推定される小高い丘の上には、現在秋葉神社の祠が祀られています。

移転時期は不詳ですが、口碑や棟札等から嘉永初年(1848)頃または文政の終わり(1830)頃と考えられているようです。

旧地詳細は下記記事にて。

 

 

当社の祭神は現在、日本武尊一柱とされていますが、これは明治に社号を小野神社として以降にそうなったようで、それ以前の説は下春命(『新編相模国風土記稿』『相中留恩記略』『神社覈録』)や天押帯日子命(『神名帳考証』)でした。

 

ただ当地を日本武尊の伝承地とする説は江戸時代からあったようで、『新編相模国風土記稿』に「按ズルニ景行天皇廿八年日本武尊當國ニ入シ時、國造等欺キテ草野ニ誘ヒ、ヤカテ火ヲ著ケ焼討ントセシ事アリシハ、果シテ此邊ノ事ナランカ」「カクテ走水ニ到リ其妃橘比賣命入水ノ時作ル歌ニ、先ノ郊野ヲ斥テ佐賀牟能遠怒ト云ルハ此所ノ事ニシテ、今ノ村名ハ必其遺稱ナルヘク覚ゆ」とあります(日本武尊が火攻めにあった場所=弟橘姫が入水の時に詠んだ「さねさし相武の小野の燃ゆる火の火中に立ちて問ひし君はも」の「小野」は当地を指すのではないかということ)。

『日本の神々』ではこの説を肯定的にみていますが、『式内社調査報告』はあくまで明治成立の牽強付会な説としています(江戸時代成立の風土記稿の記述に言及しているにも関わらず。ただし、祭神については明治以前に日本武尊説の記録はない模様)。

なお、古事記・古語拾遺では火攻めの場所は相武、日本書紀では駿河です。

御朱印

御朱印はあります。

厚木市愛甲2-20-8の熊野神社が本務社なのですが、当社も熊野神社も通常は無人。

電話連絡の上、熊野神社近くの宮司さん宅に伺う必要があります。

もちろん不在の場合もあるので、事前連絡が無難です。

アクセス

厚木ICを伊勢原方面へ降り、県道63号に合流して500mほど先の田谷交差点(位置)を右折。

2.4kmほど先の赤坂交差点(位置)を左折。650mほど先(位置)で左手の道に入り、400mほど行くと左手に境内。

表参道脇に車が入れる道があり(位置)、そこを入っていくと境内北側に駐車場があります(位置)。

神社概要

社名小野神社(おのじんじゃ)
通称
旧称閑香大明神
住所神奈川県厚木市小野428
祭神日本武尊現祭神
下春命

『新編相模国風土記稿』

『相中留恩記略』

『神社覈録』

天押帯日子命『神名帳考証』
社格等

式内社 相模国愛甲郡 小野神社

旧郷社

札所等
御朱印あり
御朱印帳
駐車場あり
公式Webサイト
備考付近に旧社地(現・秋葉神社)あり

参考文献

  • 「小野村」, 『日本歴史地名大系』(データベース「JapanKnowledge」)
  • 「小野神社」, 神社本庁教学研究所研究室編『平成「祭」データ(CD-ROM)』全国神社祭祀祭礼総合調査本庁委員会, 1995
  • 式内社研究会編『式内社調査報告 第十一巻 東海道6』皇學館大学出版部, 1976
  • 谷川健一編『日本の神々 神社と聖地 第十一巻 関東』白水社, 1984
  • 明治神社誌料編纂所編『府県郷社明治神社誌料 上巻』明治神社誌料編纂所, 1912(国会図書館デジタルコレクション 290コマ