宇流冨志禰神社(名張市平尾)

宇流冨志禰神社。

名張駅の南西300m程の位置に鎮座。

式内社 宇流富志弥神社に比定される神社で、元伊勢隠市守宮に比定される神社の一つ。

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参道

参道を北西に、商店街をまっすぐ行くと鳥居があります(境内入口から500mくらい、イオン名張店の西あたり)。

 

商店街に建つ鳥居

 

中町の歴史

寛永13年(1636年)、初代藤堂高吉は伊予の国今治から名張に入封して、本格的に町づくりを始めました。

名張は、奈良や大阪から伊勢神宮へお参りする参宮街道の宿場町として、たいそう賑わいました。

この中町は、江戸時代から昭和16年までは下横町と呼ばれ、初瀬街道沿いに発達した商業地の中心で、約150メートルの町筋です。町の入口には「一の鳥居」と呼ばれる石製の大鳥居が建ち、中町通りは名張の氏神さんの宇流冨志禰神社の参道です。「一の鳥居」は、江戸時代前期に名張藤堂家の三代目領主長守が、42歳の祝いに檜の大鳥居を寄進しましたが、宝永の大火で焼失、その後名張藤堂家や町民から浄財を募り、安永7年(1778年)に、総工費43両で高さ6メートル、笠石の長さ7メートル、柱の周り1.9メートルの石の大鳥居が完成しました。

鳥居のそばには、樹齢300年ともいわれる大きな松があり、その昔伊勢参りが盛んだった頃から町の歴史を見守っています。明和8年(1771年)、おかげ参りが流行し、一日に9200人余りの旅人がこの街を通過し、一の鳥居付近でお茶のおもてなしをしたという記録が残っています。

大正10年には名張で初のコンクリート街路舗装が完成しました。その後、南都銀行、第三銀行、名張信用農協などが支店を開設し、名張の中心的商店街となりました。

 

参道下の鳥居

 

社号標

境内

境内入口

 

社号標

 

手水舎

 

鳥居

 

扁額

 

鹿の像

 

狛犬

 

社殿前の狛犬

 

裏参道の鳥居

 

裏参道の手水鉢

社殿

拝殿

 

扁額

 

本殿

境内社等

商店街の鳥居の横の祠(金比羅社?)

 

社殿左手、興玉松尾神社拝殿

 

扁額

 

本殿

 

宮城遥拝所と明治天皇遥拝所

 

参道左手に境内社が集められている場所があり、その手前に鳥居

 

山王権現

 

八幡神社

 

左から白玉明神、愛宕神社、稲荷神社、護国神社

 

左から稲荷神社、護国神社(ここまで上の写真と重複)、八坂神社、市杵島姫神社

 

多賀大社遥拝所

 

神武天皇遥拝所と三輪明神大神神社

 

大神神社横の石祠

 

石祠後ろの巨木

 

山神を祀っているのか、古札納所なのか、扉に掛っている説明を読む限りどちらでもあるように読める…

 

境外参道脇に建つ忠魂碑

旧鎮座地

境内南、川沿いの道端に、旧鎮座地と言われる弁天岩があります。

 

塀の中に弁天岩

入ることはできません。

 

この木が絡みついている岩が弁天岩なのか、あるいは塀の内側の土手(?)全体がそうなのか…

 

名張川から簗瀬水路に水を引き込む高岩井堰(であってるかな)

弁天岩のすぐ後ろです。

 

岩祭り 弁天岩由緒書

此の処は、宇流冨志禰神社の初めての鎮座地であり、崇神天皇六十六年倭笠縫の里より御遷幸の途次御駐輦になった処にして、俗称弁天岩と称した処であります。址神護景雲元年、鹿島の神が奈良に御遷幸の途次、一時御駐輦の旧跡でありましたがその後現在地に御奉斉したのでありますが、此の境内地が一部道路になるにつれ、お祭りの斎場も道路となり跡地のみを残して、玉垣を造り保存して来ましたが、この由緒を知る氏子も少なくなり、又旧六月十六日は名張の大休み(休日)として酒を持って、お参りしたが今はすたれ、大休み(休日)も無くその由緒を知る人も少なくなったので永久的保存と、一般に知って貰うために略記しました。

かつては弁天岩の上に鎮座し「なばり社」「みなり社」と呼ばれていたという口碑伝承があったそうです。

由緒

由緒碑

宇流冨志禰神社

祭神

宇奈根命(うなねのみこと)

天照大神(あまてらすおおかみ)

武甕槌神(たけみかずちのかみ)

経津主神(ふつぬしのかみ)

天児屋根神(あめのこやねのかみ)

姫大神(ひめおおかみ)

當社は延喜式国史現在社にて主祭神宇奈根命は神武建国の始め一国の瑞穂と氏族の安泰を祈願する為に祭祀される、天正伊賀の乱にて沿革誌等兵火に遭い焼失するも古文書によれば貞観十五年(八七三年)宇奈根神従五位とあり後神位階昇進し永徳元年従一位に昇進(神園大暦に見ゆ)天武天皇三年圭田四十二束四ヶ所を以て祭祀するとあり文徳天皇仁寿元年官幣をうけ国司より幣帛を賜るとある鎌倉幕府開府により廃止となるまで歴代崇敬篤くその後松倉豊後守勝重公及び藤堂高吉公伊賀国に移封領主とし尊敬篤く神威高昂社勢整い明治十四年県社の社格を受け明治四十年附近村落の十四社を合祀し郷土の鎭守神として親しまれ信仰されて現在に至る

例祭

春祭 四月十八日

秋祭 十月二十八日

境内社として興玉松尾神社、稲荷神社、愛宕神社、八坂神社、三輪神社、八幡宮、市杵島姫神社、山ノ神、白玉明神、護国神社を併祀する。

創建時期は不詳。

『春日社記』に「神護景雲元年六月廿一日伊賀国名張郡夏見郷一瀬河爾弖御沐浴以鞭為験立給成樹付」、『春日古社記』に「伊賀国名張郡夏見郷今號御成宮或作宇成一乃瀬止云河仁弖沐浴御沐浴一作御禊之間以鞭為験立其河邊即成樹生付畢」、その他諸書にも同様の記述が見られ、武甕槌命が鹿島から春日へ遷幸の際に留まった旧跡地との伝承があります。

ただしこれは名張市夏見の積田神社(位置)のことで、当社は後にそちらから春日神を勧請したという説もあり。

 

三代実録 貞観3年(861)4月10日条に「伊賀国正六位上…宇奈根神…従五位下」、貞観15年(873)9月27日条に「伊賀国…従五位下…宇奈根神…従五位上」と見え、この宇奈根神を当社のことと見るのが通説となっています。

延喜式神名帳の「伊賀国名張郡 宇流富志弥神社」にも比定されています。

異説として、『伊水温故』では宇奈根社(当社)を延喜式神名帳の「伊賀国名張郡 名居神社」に比定しています(宇流富志弥神社についてはどこにも比定していない)。根拠は不明。

 

社伝によれば、後円融天皇の永徳元年(1381)に従一位を授けられたとされます。

天正9年(1581)兵火に罹り社殿焼失。

元和2年(1616)棟札が現存、この時再建されたと見られます。

天正13年(1585)簗瀬に来住した松倉豊後守勝重が神領を寄進、また寛永13年(1636)に藤堂宮内少輔高吉も神領も寄進したとされます。

 

明治4年(1871)村社列格、同14年(1881)県社に昇格。

 

『神祇志料』に「現今宇流富志禰神社の祭礼ニ社人皇大神ノ巡幸ニ関係アル神戸村字藏崎又ハ岩花ト云ヘル處ノ水ヲ採リテ潔斎スルノ旧例アルヲ以テ本社ヲ大神ノ隠市守宮ニ充テントスル」という記述があり、隠市守宮の比定地の一つとされるようです(ただ、同書はこれを付会の説とする)。

 

当社の社名は現在は宇流冨志禰(うるふしね)神社。

しかし、延喜式神名帳では「宇流富志弥神社」とあり、諸書では「うなねふしみ」「うるふしみ」等と訓じています。

「うるふしみ」であれば潤う伏水→水神を祀るとする説、「うるふしね」であれば粳米、うるしねを意味し穀神を祀るとする説があります。

他に春日神遷幸の伝承に見られる御成宮・宇成宮から転訛したという説も。

 

主祭神は宇奈根命。

神社の公式サイトによればその名の由来は「御神体である赤岩が置かれている場所が名張川のうねりの側にあることから、うねる→うなねとなった」とのこと。赤岩は弁天岩のこと?

 

なお明治以前は、春日神が主祭神とされており、現在もお春日さんというのが通称となっているようです。

御朱印

御朱印はあります。

社務所で拝受可。

アクセス

車での行き方。

伊賀上野からであれば、国道422→368号と南下して、蔵持町原出交差点(位置)を右折して国道165号へ。

桜井や宇陀からであれば、ひたすら国道165号を北東へ。

名張駅の少し東、夏見交差点(位置)を西に折れます。

1.2kmほど行くと右手に二の鳥居がありますので、右斜め後ろ方向に大きく曲がって鳥居を潜り境内の方へ上っていきます。

駐車場は境内の向かいにあります(位置)。

 

徒歩なら名張駅から5分ほどです。

神社概要

社名宇流冨志禰神社(うるふしねじんじゃ)
通称お春日さん
旧称

宇奈根神

宇奈抵社

宇奈根大家子大明神

宇那根若宮

宇名根之社

春日大明神

住所三重県名張市平尾3319
祭神宇奈根命
配祀

武甕槌神

経津主命

天児屋根命

姫大神

大物主命

火之迦具土命

宇迦之魂命

應神天皇

健速須佐之男命

仁徳天皇

社格等

式内社 伊賀国名張郡 宇流富志弥神社

式内社 伊賀国名張郡 名居神社

日本三代実録 貞観三年四月十日甲寅 宇奈根神 従五位下

日本三代実録 貞観十五年九月廿七日己丑 宇奈根神 従五位上

元伊勢 隠市守宮 伝承地

旧県社

札所等
御朱印あり
御朱印帳
駐車場あり
公式Webサイトhttp://urufushine.jp
備考旧地は境内南の弁天岩

参考文献

  • 「宇流富志祢神社」, 『日本歴史地名大系』(データベース「JapanKnowledge」)
  • 「宇流冨志祢神社」, 神社本庁教学研究所研究室編『平成「祭」データ(CD-ROM)』全国神社祭祀祭礼総合調査本庁委員会, 1995
  • 式内社研究会編『式内社調査報告 第六巻 東海道1』皇學館大学出版部, 1990
  • 谷川健一編『日本の神々 神社と聖地 第六巻 伊勢・志摩・伊賀・紀伊』白水社, 1986
  • 三重県神職会編『三重県神社誌 第3』三重県神職会,1926(国会図書館デジタルコレクション 9-21コマ
  • 明治神社誌料編纂所編『府県郷社明治神社誌料 上巻』明治神社誌料編纂所, 1912(国会図書館デジタルコレクション 720-721コマ