大蓑彦神社(さぬき市寒川町石田東)

大蓑彦神社。

さぬき市寒川町、明神池という池の畔に鎮座。

式内社 大蓑彦神社に比定される神社。

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境内

参道左手に明神池

 

参道正面から

 

参道下の道路沿いに小さなお社

 

社号標

 

鳥居扁額

 

狛犬

 

手水舎

 

注連柱

 

神輿庫か神具庫か。

境内社はなく、シンプルな境内。ただ参道、境内にはすごい数の毛虫が…毛虫はこの時期大量発生していたようで、ちょうどこの日、高徳線が大量の毛虫を踏み潰して進めなくなり運休なんてことがあったようです。

社殿

拝殿

 

扁額

 

本殿

由緒

創建時期は不詳。

『紫雲山極楽寺宝蔵院古暦記』に「延喜二十一年春三月、大箕社別當置」「永承四年夏六月、勅賜佛舎利神崎・高岡兩八幡、下張・大箕・多和神祠」と、「大箕社」として現れます。

 

後述の通り、往古は東の山上にあったと伝わります。

また社殿は現在東向きですが、かつては北向きであったとも。北向きだった理由、向きを変えた理由ともに不明。

 

延喜式神名帳にみえる「讃岐国寒川郡 大蓑彦神社」は当社に比定されています。

 

『平成祭データ』から、当社の由緒・祭神について引用。

平成「祭」データ

当社は延喜式神名帳に「讃岐二十四座の一」とす、里人蓑神明神と奉称す、神社の北方に寒川渕ありて名水なり、寒川郡名之によって起ると云う。御祭神大蓑彦命は上古蓑を作り始め給ひし功績によりて称へし御名なるべしと云う。一説には素盞嗚命、又水霊神を祀ると云へり、神名帳考証に「寒川郡大蓑神社水霊郡名寒川郡因此神歟」と云う。特選神名牒に「水霊の説いと由ありて聞ゆ故考へるに延暦儀式帳に牟祢神社は大水上児寒川比古命寒川比女命と云う、又那自売神社は大水上御祖命なりとある。大水上神、大水上御祖命同神にて、此大蓑彦命も大水彦神の義ならん。郡名は寒川比古命、寒川比女命に由ありと思うべし」と記されたり。

『特選神名牒』のいう牟祢神社は皇大神宮末社の牟祢乃神社、那自売神社は同じく皇大神宮末社の那自賣神社を指すかと思われます。

大蓑彦命は大水彦神の転訛だとし、寒川郡の郡名はその御子神である寒川比古命、寒川比女命に由来する、ということのようです。

寒川比古命、寒川比女命と言えば相模国一宮 寒川神社の御祭神。

下総の式内社にも寒川神社がありますし、あるいは讃岐から関東へ移ってきた人たちがいてこの二神を勧請したのかもしれません。

 

また、素戔嗚尊説については、『讃岐國式内廿四座案内記』で、『日本書紀』の「于時、霖也。素盞嗚尊、結束靑草、以爲笠蓑而乞宿於衆神」を引用し、「是も以て見れば素盞雄尊を祭り玉ふか」として挙げられています。

 

香川県神社誌

石田村郷社石田神社境外末社。延喜神名式に『讃岐国寒川郡小大蓑彦神社』とありて延喜式内讃岐国二十四座の一とす。里人蓑神大明神と奉称す。神社の北に寒川淵ありて名水なり、寒川の郡名これによって起ると云ふ。祭神大蓑彦命は上古蓑を作り始め給ひし功績によりて称へし御名なるべしといひ、木田郡田中村に小蓑なる地ありて小蓑神社あり、縁故あるべしと云へり。一説には素盞嗚尊、又水霊神を祀ると云へり。神名帳考証に『寒川郡大蓑彦神社水霊郡名寒川因此神在歟』と云ふ。特選神名牒に『水霊の説いと由ありて聞ゆ故考るに延暦儀式帳に牟祢神社は大水上児寒川比古命寒川比女命と云あり。又那自売神社大水上御祖命などある大水上神大水上御祖命同神にてこの大蓑彦命も大水彦神の義ならん郡名の寒川比古命寒川比女命に由あるを思ふべし』と記されたり。

神社の北西に御田神戸と称する地あり、往古当社の祭田たりしと云へり。天正十年長曽我部氏の兵乱に際し石田左兵衛矩弘邑民と共に当社及び布勢神社、八幡宮(石田神社)を守りて事なきを得たる由三代物語に載せられたり。寛文七年東の高山より現地に遷座し社殿を営む。これ行人の乗馬を咎むる事頗る厳なりしを以てなりと。享保年間及び明和六年社殿を修覆せり。

旧地「フルヤシロサン」

こちらの神社、かつては東の山の上にあり、その地は今「フルヤシロサン」と呼ばれているそう。

ちょうど東に剣山と呼ばれる山があり、頂上に金毘羅神社が祀られています(おおよその位置。googlemapだと剣神社となっている)。

 

また、南東の門入ダムの西側の山に、山上神社があります(おおよその位置)。

 

この二社のいずれかが旧社地かなと思いましたが、軽く調べたところでは結びつく情報がなかったので実際どうなのかはわかりません。いずれ二社とも訪れてみたいところ。

御朱印

御朱印の有無は不明。

現在は石田神社の境外末社となっている様ですので、石田神社に確認するのがよいかと思います。

 

アクセス

石田高校南交差点(位置)から、県道264号を南へ。1km程先の十字路(位置)を西に入り(右折)200mほど行くと神社の下あたりに着きます。

駐車場はないので、車は池の畔の未舗装の道(位置、参道?)か、土手下の車道の脇に停めるか。

神社概要

社名大蓑彦神社(おおみのひこじんじゃ)
通称ミョージンサン
旧称

大蓑彦大明神

大蓑大明神

大箕

蓑神

住所香川県さぬき市寒川町石田東1743
祭神大蓑彦命現祭神
素戔嗚尊

『讃岐国式内廿四座案内記』

『古今讃岐名勝図会』

水霊(大水彦神)

『神名帳考証』

『讃岐廿四社考』

社格等

式内社 讃岐国寒川郡 大蓑彦神社

石田神社境外末社

札所等
御朱印不明
御朱印帳
駐車場なし
公式Webサイト
備考旧地は東の山の上「フルヤシロサン」(詳細位置不明)

参考文献

  • 「大蓑彦神社」, 『日本歴史地名大系』(データベース「JapanKnowledge」)
  • 「大蓑彦神社」, 神社本庁教学研究所研究室編『平成「祭」データ(CD-ROM)』全国神社祭祀祭礼総合調査本庁委員会, 1995
  • 梶原藍水『古今讃岐名勝図絵』高松製版印刷所, 1930(国会図書館デジタルコレクション 52コマ
  • 香川県神職会編『香川県神社誌 上巻』香川県神職会, 1938(国会図書館デジタルコレクション 102コマ
  • 式内社研究会編『式内社調査報告 第二十三巻 南海道』皇學館大学出版部, 1987

コメント

  1. miz より:

    私はこの大蓑彦神社、剣山周辺に実家があるのものです。
    剣山は幼い頃、祖父と一緒に毎年お正月によく登っていました。祖父が亡くなり、大人になってから久々に登りたいと思い、半年前に登ったのですが、頂上のお祭りしているお社がボロボロになりかなり風化していました。
    今でも近所の集落の者で持ち回りでお世話をしているそうですが、お社の修復までには至っていないようです。大変に悲しく、寂しくなりました。私が家を引き継ぐ際には何とか修復できればと思っております。
    集落外の方がお参りするにはかなりのハードルの高い道ではないかと思います。最近は猿やイノシシもよく出るようで、一人で行くなと祖母から言われ、帰省のたびに行きたいと思うのですが、なかなかお参りできない状況です。
    剣山が大蓑彦神社とつながりがあるかもしれないという情報をこちらで初めて聞きました。
    とても興味深く感じております。このような神様の歴史を調べたいと思い、検索した末たどり着きました。良い情報をいただきありがとうございます。
    山上神社には行ったことがないのですが、次回の帰省の際にお参りしてみたいと思います。

  2. たんぽぽろぐ より:

    >mizさん
    こんにちは。
    さぬき市の剣山、お社が痛んでいるのはネットで調べて知ってはいたのですが、実際にボロボロと聞くと悲しくなります。ただ、低山とはいえ急登もあるようなので、なかなか修復もしづらいと思います。風雨を遮る物のない所で痛むのも早いでしょうし。
    登ってみたいと思いましたが、道が険しい上に猿や猪が出るとなると躊躇いますね…
    大蓑彦神社との関係については、旧地が現社地の東方の山上という伝えがあることと、剣山の山上に神社があることからもしかしたら、と考えた次第です。近くには山上山の山上神社もありますし、明神池のすぐ東にも丘がありますので、実際どこだったのかは不明です。記事にも書いた通り旧地はフルヤシロサンと呼ばれているそうなので、現在でも場所をご存知の方がいらっしゃるかも知れません。帰省された際に機会があれば、是非聞いてみてください。

  3. miz より:

    本当によくお調べいただいているんですね。
    おっしゃる通り、剣山は低い山ですが頂上付近では岩肌を登るところがあり、急斜面のため縄が張っている箇所もあります。私が幼い頃に張られていたものと同じ縄のようでしたが、しっかりしていましたのでまだしばらくもちそうです。
    半年前はスニーカーで行きましたが、細かい砂利の傾斜もあるため滑ります。山用の靴の方が安心だと思いました。
    「フルヤシロサン」という言葉を祖母が言っていたのを聞いたような記憶があります。ぜひ聞いてみたいと思います。何かわかりましたらご報告しますね。
    ちなみに、いろいろな神社にお参りされているようですが、神社の情報はどのように調べていらっしゃいますか。
    あまり有名ではない地元の神社についても生の情報を得ていらっしゃるように感じます。
    私も自身の地元の神社だけでなく、いろいろな神社仏閣に興味があります。参考にご教示いただけますと幸いです。

  4. たんぽぽろぐ より:

    >mizさん
    旧地の件、情報をお知らせいただけるのを楽しみにしています。
    神社の情報ですが、まずはネットで調べています。
    私は延喜式内社を主に参拝していますので、式内社を記載しているサイト(「玄松子の記憶」さんやその他神社系のサイト・ブログ、wikipedia等)を見てチェックします。
    また図書館で「式内社調査報」や各県の神社誌、郷土誌などを確認しています。
    後は参拝時に宮司さんや地域の方に色々と教えていただけることもあります。
    あくまで趣味なので、情報元はこんな感じです。

  5. miz より:

    お返事がかなり遅くなり大変失礼しました。
    延喜式内社という本を図書館で探しましたがなかなかない本のようですね。今度国会図書館に行ってみたいなと思います。
    情報収集の方法をお聞きして大変参考になりました。
    玄松子の記憶というブログは読んだことがありました!
    郷土誌はなかなか手にしていなかったので読んでみますね。
    いろいろとご教示いただきありがとうございました。
    ちなみにフルヤシロさんについて祖母に聞きましたが知らないとのことでした。ただ、忘れている可能性も高いので、ふとした時に言うかもしれません。
    もしわかりましたらご報告しますね。
    これからもブログ楽しみにしております。